ペットの肖像画への思い

ぬいぐるみのクロが来て、日常生活を送るうえで
何かと慰められたことは間違いありません。


ぽっかりと空いていた空間に、クロそっくりな姿がある。
かたちあるものを、膝に載せ、撫で、抱きしめることができる。


もちろんそれで全てが満たされるほど簡単な話ではありませんが、
やはりどうしても私たちには必要だったのだと思っています。


自分の中に悲しみなどの重い感情があると、
人は様々な反応をして解消しようとするようです。


音楽好きの夫は、クロの思い出を歌にして
一人で仕事中の車の中で口ずさんだりしていたそうです。


私はといえば、クロの生前よりもずっと
クロをモデルにした絵が増えました。


素朴なタッチのイラストから始まり、パステルの肖像画まで、
描いても描いても満たされぬ思いをぶつけるように
何枚も描きました。


お客様から注文をいただいて、ペットの肖像画を描こうという考えが
自分の中ではっきりと形を取った経緯は、明確には説明できないのですが、
クロを作ってくれたぬいぐるみ作家さんが私にもたらしてくれたものを、
私も絵を描くことで誰かにお返しできるのではと思ったことは
理由の一つになっています。


自分自身は、クロをいくら描いても描いても満足がいくことがないのですが、
お客様にはかわいいペットの肖像画を喜んでいただいて、
少しでも幸せな気持ちになってもらえるお手伝いができればと思っています。